このごろお勤め先が少々よくない雰囲気になってきている。
表立って問題があるわけではないが、なんかいまいちスタッフ間のコミュニケーションが円滑に行ってない感じ。
基本、お店なんてのは営利目的の集団なのだから仲よしこよしである必要はまったくない。
だけど、関係が良くないと意見を出し合わなくなり、出し合わなくなると相手の考えてることがわからなくなり、ますます相手との距離は広がり、いつしか埋めがたい深い溝ができてしまうことも多い。
わたしが社員さんやらだったら話は早いんだが、なにぶんお気楽パートの身。
できることなんてなんもない。具体的にお店の利益になるような提案ならまだしも、そういう微妙なアレコレになまじ首突っ込んでもよけいめんどくさい事態になるだけだ。
なので、わたしはわたしにできることを。
お店に対して、MGRや社員さんに対しても山ほど言いたいことはあり。
わたしはそれを溜めない。隠さない。不満も批判も残らずぶちまける。
ほんとうに些細なことも、言ってもどうしようもないことも、もしかしたらちゃんとしたオトナが言うべきじゃないかもしれないことも、全部言う。
自由な立場ゆえ。それを採用するかしないかは聞いたほうが考えればいいことで、末端の意見ならどんなことだって無駄ではない、ハズだとわたし自身考えているから。
われながら言い過ぎなんじゃないかと思うことも多いが、そこで言葉をオブラートに包んだらわたしがわたしである意義がない、と謎の自己評価。
お勤め先のランチは曜日によって客入りが大きく異なる。
忙しい曜日は厨房ホール含めて5人で回すのが常だったのだが、春先にランチを手伝ってくれていた学生が卒業してから、けっこうな頻度で4人体制の日がある。
なかなかの壮絶ぶりだ。部活並みの運動量。終わると一歩も動けない…なんてこともよくある。
再三ランチスタッフを募集してくれと訴えているのだが実現に至っていない。
いい加減腹に据えかねていたので、一日MGRに愚痴混じりにその話をした。
「時間給で働いてる人間にとっては忙しかろうが暇だろうがいただけるもんはおんなじ。何度もランチスタッフ増やしてくれって言ってるのにこの体育会系のノリはいつまで続くんだよ。時給あげろとまでは言わないけど、それこそ缶コーヒーの一本でもいい、ねぎらいやらオプションでもなきゃ正直やってらんねーよ」
みたいな話。
まあそこまで攻撃的なテンションで話したつもりはない。へとへとだったし、単純にバカ正直にそのときの心情を吐露したに過ぎない。
MGRは愛想笑いを浮かべてわたしの愚痴を聞いていたが、わりといつもヒトの話を聞いてんだか聞いてないんだかわかんない態度の人なので、わたしも言うこと言ったし、その後はまるきり元通りで、すっかりそれで忘れていた。
そしたら先日出勤時。
「たるたるさん、ちょっと…」
「ん?なに?」
(小声で)「冷蔵庫にコーヒー入ってるんで」
…えーと、それはアレか。
もしかして、先日の言葉を文字通り額面通り受け取って、わたしに缶コーヒーを買ってくれたってことか?
もうなんか、嬉しいやら恥ずかしいやらじれったいやらモヤモヤした気持ちで頭かきむしって叫びたくなったよ。
うん、えっとね、そうじゃないんだよ?
いやそうなんだけど、そういうことじゃないんだよ?
ニュアンスでわかんないかな、言いたいこと?伝わんなかった?
わたしの伝え方が下手だった?下手過ぎた?
小学生の男の子みたいなリアクションじゃんかよそれ!
もうなんかいたたまれなくて。
缶コーヒーでも買ってくれなきゃやってらんないよ、って言ったらコーヒー買ってくれるって、どんだけ安直なの。
もはや健気にすら見えてくる。
でも、とにかくも「なにかしよう」と思ってくれたことは嬉しい。
嬉しいけど、そうじゃないんだよ。根本的な解決にはなにひとつ近づけてないし、文句を言ったわたしひとりの機嫌を取ったところでどうにもならん。
これ以上の誤解が怖かったので、伝わるかどうかはわからないけどそれも正直に伝えた。
「えっとね、なんていうか。けして缶コーヒーが欲しかったわけじゃないんだよ。でも、買ってくれようと思った気持ちが嬉しかった、ありがとう」
わたしの伝え方が悪いのかもしれん。
自分では心情感情120%全部オープンに伝えてるつもりでも、相手には意外と伝わっていないものなのかもしれん。
自分が思うほど相手は自分を理解してくれていないかもしれないし、あるいはその逆もあるのかもしれん。
なんだか久しぶりに、身をよじるほどの「うがー」って気持ちになったよ。
職場も好きだし、件のMGRもヒトとして素直だと思うし好きだけど、こんなにキャッチボールが難しいとは思わなんだ。
社交力をウリにしているつもりのわたしでさえこうなんだから、人生において「人間関係」ってのはよっぽど難しいんだろうな。
…あれ、それともわたしがアホなだけか!?
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