そもそもは、日頃好きで拝読しているブログを書いているちゃんこさんが、ツイッター上で「お暇な方よかったら都内で一緒にお茶を飲みません?」みたいな文章を発信していたのがきっかけ。
少なくともわたしにとっての「お茶を飲む」は=「人と会う」。
間に入るお茶はあくまで「ツール」であって、目的にはなりえない。
だけど彼女の文脈で気づくべきでした、表記が「お茶でも飲む」ではなく「お茶を飲む」だったことで。
目的地は人形町。うわーはじめて降りるなこの街。
知らない街へ行くときは30分前には到着して集合場所を確認するのがわたしの常。
この日も無事に店の場所を確認してから、事前に地図上でチェックしていた名所を軽くめぐることに。
ちょっと暗くてわかりにくいが中に人形が入ってる↓
くわしくは知らんが人形浄瑠璃なんかの人形を作ってる人が住んでたりした一帯だったようだ。
スマホの地図をぐるぐる回しながら(←典型的迷子)歩いていると、ご立派な小学校が現れた↓
こんな都会の超ど真ん中になにやらすごい建物だ。
だが地図をどう見てもココが西郷どんの屋敷跡。
近寄って見てみると↓
あったあった、プレート紹介のみなのね。
都内ってこういうところ多いなあ。
ともあれ確認できて満足。
もうひとつ気になってたのが「谷崎潤一郎生誕の地」。
これも地図上ではあきらかにこのへんなんだよなー…っていうビルの一帯をぐるぐる回っていたら、観光と思しき集団がなんてことないビルの前でシャッター切りまくってる。
おおコレだな、間違いないコレだな。ありがたい。
一団が去ってからゆっくり近づく↓
いやべつに谷崎潤一郎好きなわけでもなんでもないんだけど。
単にせっかく行ったしついでに見ておこうかなくらいな感じ。
こちらのクジラもいちおう観光スポットの一環のよう↓
なぜに鯨?と思ったら髭があやつり人形のバネに使われてるんですってよ。
はー勉強になるねえ。
上記の3点はいずれも相当狭い範囲内にありました。
もし行く機会がありましたら3点まとめて愛でましょう。5分とかかりません。
ちなみに人形町プチ観光を無事終了して、約束の時間まで地図上に出てきていた「エクセルシオール」で時間つぶそうと思ってたんだが。
アッレー?どう探してもそんな店ないやん、と思ったらマンションの名前でした。
まぎらわしい名前つけんなや!
エクセルシオールって言ったらコレじゃん…
ともあれ約束の時間にお店へ。
ほぼ時間ぴったりに入店したら、すでにちゃんこさんがいらした。
ハジメマシテー。
見るからに上品なマダムといった風情。
少し気圧されながら席に着く。
ご挨拶もそこそこに並べられた茶器を眺めて思わず生唾を飲み下す。
あれ、これなんか…
お茶飲む、っていうか、ホントにお茶飲む感じのやつか?
お茶「喫む」雰囲気のガチのやつか?
ちなみにこちらはエルメスだそうな↓
しばらくして3人目の参加者が現れるに至ってこの集まりが「お茶飲みながらおしゃべりする会」ではなく「お茶を愛でる(ついでにおしゃべり)会」なのだと知る。
3人目はうさんくさいオッサン折り目のきちんとした紳士。
平日の昼間にお茶を嗜むには正直どう見ても異質だ。
聞けば納得、お仕事も兼ねているのだそうな。
友福さんが数種類のお茶を取り出しテーブルに並べながらちゃんこさんと談笑する姿を見てわたしはようやく状況を理解した。
そうか、これは中国茶をこよなく愛するマニアたちの集まりだったのだ。
どう考えても自身が場違いだが、そこで尻込みするようなタマでもない。
知らないことを知るのは単純に面白い。
並べられたお茶のアレコレやらそれぞれのお茶にまつわるお話などを矢継ぎ早に質問し、「へぇ~!」を連発させていただいた。
呆れず嫌がらずお付き合いくださる懐の広い方々でよかった、ありがとう。
さっそく一杯目のお茶を淹れる。
本日お茶を淹れてくださるのはちゃんこさんご本人。
聞けば茶芸師という資格をお持ちだそうで、所作のいちいちが美しい。
ベテランのバーテンさんの手つきなんかは見ているだけで嬉しいが、それに近い。
なるほど文字通り「芸」なんだろうね。
ご自身は「おいしく淹れることにこだわっている」と話していた。
いわゆる茶道は「道」だけあって作法などもうるさいが、それよりはもう少し ゆるめに純粋に「お茶を楽しむ」のが中国流、なのかな。
文化レベルが高いことは間違いない。
いつか招かれたお花の展示会のことを、脈絡なく思い出した。
その展示会に招いてくれた義従妹とちゃんこさんがとてもよく似た雰囲気だったから、かも。
文化的で女性的で、上品で繊細で。
とりあえずアレだ、つまり普通に生きてったらわたしは一生交わる機会がないだろうなって人種。
一杯目がちょうど入ったあたりで4人目の参加者が到着。
どうやら彼女は「こっち側」の人のようだ。
ちゃんこさんにたぶらかされての人柄の良さに惹かれてやってきた、という、とても女性らしい方。
自己紹介もそこそこにとりあえずお茶を飲む。
雲南毛峰…だったかな?
名前が耳慣れなすぎていちいち漢字を訊ねる阿呆なわたし。
淹れ終わったあとの茶葉はじゅんさいのよう。これがまたいい香り
一度の茶葉で数煎淹れるのが普通だそうで、なるほど1煎目と2煎目では香りも味も異なる。
ゆったりとお茶を淹れ、ゆったりとそれを飲み干し、またゆったりと淹れる。
それでいて居心地は悪くない。
一連の動作に心地よい沈黙があって、トーンの上がりすぎない心地よい会話があって、そこだけ時間の流れが異常にゆっくりになっているように感じた。
お次のお茶は蒙頂甘露。
これはまるで海苔のような香り。お味も海苔寄り。…海苔寄り?
ぐぐいと片手で飲める猪口のような器がなかなか良い
淹れ終わった茶葉もそれぞれに違いがあって面白い
ほどなくしてわたしがお会いできた最後の参加者が到着。
きびきびとした話し方をする、個人的に大好きなタイプ(その気はない念のため)。
彼女が自虐的に「茶沼の住人」と発言していて、それがすごく気に入った。
以下全部やってたらキリがないのでとりあえずいただいたお茶一覧。
一応確認したがちょいとうろ覚えなのでまちがってたらスマン。
信陽毛尖。産毛がスゴイと口々に言っていたな。
碧螺春。花の香り強くていわゆる緑茶っぽくなかった
最後がたしか龍井茶。茶葉も独特でいちばんおいしかったかも
お茶を挟んで初対面の方たちと数時間。文字通りあっという間に時間は過ぎた。
中座が惜しかったがほっといたらホントに朝までやりかねない雰囲気だったので後ろ髪を引かれながら夕暮れ時にひとり退散。
現実世界に戻ってくるのに時間がかかった、って言うくらいわたしにとっては非日常的、不思議でエキサイティングな体験だった。
どのくらい舞い上がってたかってーと、帰りに人形焼買って帰ろうと思ってたのをきれいさっぱり忘れて地下鉄に乗っちゃったくらい。
わたし自身はなにかに傾倒することを好まない人種だが、なにかに傾倒している人たちは好きだし、そういう集まりもすごく楽しい。
いや、そりゃ楽しいに決まってる。情熱傾けてる人たちからイイトコドリでお話が聞けるんだ、楽しくないわけがないだろ。
自分をすごくズルイと思うし、そんな自分を受け入れてくれる「向こう側」の人達をほんとに懐が広いなと思うし素直に尊敬する。
わたしにとって興味の対象物はいつだって人間。
お茶もコーヒーも煙草も間に挟まるもので、どこまで行っても「ツール」でしかない。
でもそのツールを使って、ツールを通じて、あらたな知り得なかった人たちと出会えることは実に面白い。
今回お会いできた面々はどなたも個性的で、もっともっといろんな方面のお話をしてみたいと思えた。
それは、間にお茶があろうがなかろうがって意味で。
ちなみに、個人的にこの日いちばんおもしろかった話は「中国の足場は竹」でした。
ほんとうに稀有で貴重な体験でした。
この場を借りて茶沼の住人中国茶をこよなく愛する文化人たちに心からの敬愛と感謝を申し上げます。
もしまたご一緒してくださる機会があるなら、ぜひ規模のデカイ「国際全人類飲み物選手権」(←ナニコレ?)みたいなイベントにお誘いいただけると嬉しいです!
マグカップ持って場違いヅラでノコノコ出かけて行きますけえ!
そんな中国茶にご興味のある方はこちら↓